ムーンエンド・キャンペーン第一部 番外編・第1章

 

DM 「それでは、二人とも用意はいいかーい?」
フェイグランス 「おー!」
ルイ 「はい。 いいですとも。 …と、言ってもキャラは石になってしまっているわけですがね。」
DM 「そういう事。 このお話は、ルメイオ村で君達が石にされ、仲間達が救出の為に『生命の水』を取りに行っている間の出来事という事になる。(第一部・第10章参照)」
ルイ 「ふむふむ。」
DM 「それじゃ、行ってみようか。 まず、舞台はルメイオの村長宅。 石像となった君達は村長宅に滞在しているレイド老人に預けられている。」
フェイグランス 「あいよ。」
 
それは、ジョン達一行が出発した日の夜の事だった。 石像と化しても物事を知覚できるルイとフェイグランスは、老人がどこかへ出かけているのに気づいていた。
不意に隣の部屋で物音がした。 扉が荒々しく開かれ、何者かが姿を現す。
…違う、レイド老人ではない! エルフの容貌を持ち、肌の色が黒い『ダークエルフ』達だ! 彼等はルイとフェイグランスを担ぐと、いずこかへと運んでいった。 
 
DM 「というわけで、気がつくと牢屋のようなところにいるよ。 しかも石の体ではなく、生身の体だ。」
ルイ 「おおっ、なんか知らないけど、自力で戻っちゃったみたいですね。ラッキーですよ。」
フェイグランス 「前回のシナリオのラストでは、確かまた俺達は石像になっていたよーだけど。」
ルイ 「そういう事は、我々は知らないのです。 なので思い切っていきましょう。」
フェイグランス 「何を?」
ルイ 「…とりあえず、牢屋の中はどんな感じですか?」
DM 「隙間の無い石を敷き詰めた部屋だね。 壁も、床も。 窓はなく、どっしりとした鉄の扉が君達を閉じ込めている。 それから、君達は装備の類は何一つ持っていない。 普段鎧の下に着ている服だけだ。」
フェイグランス 「なるほどね。」
DM 「それから、この部屋には松明が備え付けてあって、それに付けられた火がジジジと音をたてながら部屋を照らし出している。」
ルイ 「囚われの身ですか。 扉は当然鍵がかかっているんでしょうね。」
DM 「もちろん。」
ルイ 「さて、困りました。」
フェイグランス 「自分達が置かれた状況を整理してみようか。」
ルイ 「まず、ここはどこか、ですね。」
フェイグランス 「謎だね。 牢屋の中でダークエルフというくらいだから、どこか人里はなれた洞窟の中だとは思うけど。」
ルイ 「同感です。 只の牢屋なら、明りとり用の鉄格子付き窓でもつけておけば、わざわざコストのかかる松明をつけておくこともありませんしね。 そしてわざわざ松明をつけておくという事は…。」
フェイグランス 「閉じ込めておくだけではなく、監視するつもりなんだね。きっと。」
ルイ 「同感です。 じゃあ、なんで監視する必要があるのかですが、これはやはり今まで我々に関わったか、これから関わろうとする人物の仕業といったところですか。」
フェイグランス 「何者かは不明だけど、マスター達ではない様な気がする。」
ルイ 「ほう?」
フェイグランス 「敵なら監視なんかしなくても、石像になった俺達を砕けばいいだけじゃない?」
ルイ 「じわじわ殺したり、何かに利用するつもりなのかもしれませんが。」
フェイグランス 「うーむ。」
DM 「その時、『大体、合っているようだな。』という声と共に、牢内の空間の一部に歪みが生じ、そこから一人の男性が現れる。」
ルイ 「おお?」
DM 「男の見た目は20代後半くらいで、ゆったりとした服を着込んでおり、その物腰からは落ち着きが感じられるね。 その何色とも分からぬ瞳は、見る者を惹きつける不思議な光を放っている。」
フェイグランス 「今の声は、あなたか。」
DM 「男は君の言葉に静かに頷いて、『さてと、状況を説明してやろう。』と口を開く。」
フェイグランス 「黙って聞くずらよ。」
DM 「ほい。『あの4人にだけ試練を与えるのは不公平だと思ったのでな。 今お前達はダークエルフの住む、地下洞窟の一室にいる。 お前達は明日の夜明け、あと4刻のうちにレイドの元へ帰らねばならない。 夜が明けると、お前達の体は石に戻るだろう。 とりあえず自分の力と、それに武器を与えよう。 あとは自分の力で何とかすることだ。』」
フェイグランス 「試練ねぇ。 あなたは一体何者?」
DM 「『それは、まだ答える時ではない。』と男が言って頭上に手をあげると、剣とメイスが現れる。」
ルイ 「割と無茶を言いますね。 今の話の通りだとすると、あまり時間もありません。」
DM 「男はそのまま消えてしまう。」
ルイ 「謎の人物でしたね。 そして、大体予想はアタリでしたか。」
フェイグランス 「だね。 まずは武器が手に入っただけでも良しとしよう。うん。 さっきのオッサンは、そのうち探して文句いってやるということで。」
DM 「武器はどちらも魔力がかかっていない、普通のものね。」
ルイ 「鉄の扉には、のぞき窓はついてますよね?」
DM 「うん。 この時代の先端技術である、ガラスがはめ込まれた覗き窓がある。」
ルイ 「扉の向こうに、誰かいそうですか?」
DM 「いいや、見える限りでは、誰もいない様だね。 通路を挟んで、向かいにある扉だけが見える。」
フェイグランス 「外の音が聞こえないかどうか、耳を澄ましてみる。」
DM 「少し離れたところから、エルフ語の会話が聞こえてくるよ。 どうやらゲームでもやっているようだね。」
ルイ 「…よし、アレやりますよ。アレ。」
フェイグランス 「OK。 武器は覗き窓から死角になるように持つからね。」
ルイ 「同じく。(大きな声で)うぉー!腹がいてぇ!!腹がいてぇよー!ふふふ、痛いんだったら!うふふ。」
フェイグランス 「真面目にやれぇー!(蹴り)」
ルイ 「うぎゃー!今度はスネが本当にいてぇー!うへへ!」
フェイグランス 「うへへって…(笑)。」
DM 「騒ぎを聞きつけて、ダークエルフが一人寄ってきた。 覗き窓から様子をうかがいつつ、エルフ語で『なんだ、うるさいぞ。』と言っている。」
ルイ 「腹がいたいです!」
DM 「どうやら、ルイの言葉を理解していない様だね。」
フェイグランス 「じゃあエルフ語で、『相棒が、腹が痛いと言っている。』と通訳。」
DM 「じゃあ、ルイを一瞥した後『知るか、そんなもん。』と言っている。」
フェイグランス 「やっぱりね。 でも、相手は覗き窓からこっちを見ているわけだ。」
DM 「そう。」
フェイグランス 「ならば、ガラスを破って剣でザックリやってやろう!」
DM 「不意打ち判定…不意は討たれなかった。 ガラスは割れたけど相手は咄嗟に飛びのいて、『暴れたら、殺せといわれている。』と言いつつ剣を抜く。 イニシアチブ。」
フェイグランス 「こっちからだ。 マジックミサイルで、3本のうち2本を撃って9ポイント。」
DM 「それで倒れたけれど、音を聞きつけて2人分の足音が近づいてくる。」
フェイグランス 「扉の影に隠れよう。」
DM 「ほいほい。 相手は扉を開けて中に入ってくるよ。」
ルイ 「これで、出られそうですね。」
フェイグランス 「うん。 荒っぽいけれど、仕方が無い。」
 
2人はダークエルフ達を倒し、牢から抜け出すが…
 
DM 「新たに、また足音がこちらに近づいてくるよ。」
ルイ 「結構、敵がいたもんですね。 とりあえず、向かい側の扉に入って隠れましょう。」
フェイグランス 「あいよ。」
DM 「扉の中は、1ブロック四方の部屋。 他に扉や通路はない。 どうやら、廃品いれのようで、松明の燃えカスなんかが積み上げられている。」
ルイ 「逃げたと思ってくれればいいんですがね。 まぁ、無理ですか。」
フェイグランス 「一気に飛び出して不意を討つか! その前にミラーイメージを唱えて、2体出現。」
 
扉から飛び出した2人は、4人のダークエルフの不意をつく事には失敗したものの、2ラウンド目にはフェイグランスが1体を倒し、4ラウンド目には…
 
ルイ 「ホールド・パーソンです。」
DM 「うわ、3人ともかかっちゃったよ。」
フェイグランス 「よっしゃよっしゃ。」
ルイ 「さて、どうしましょうかね。」
フェイグランス 「さっき牢を開けた人は鍵とか持ってるだろうから、3人とも牢屋に入れて鍵をかけちゃおう。」
ルイ 「ですね。 運が良ければ出してもらえますよ。」
フェイグランス 「さて、ダークエルフ達がやってきた方向に行ってみようか。」
ルイ 「そっちしか通路はないわけですがね。」
DM 「ほい。 少し進んで右手に折れると、2ブロック四方の部屋になっていて、中央にテーブル。 それを囲むように椅子が3つ並んでいるんだけど、椅子2つは急いで立ち上がったせいか、後ろ向きに倒れている。」
ルイ 「1人目を倒した後、駆けつけてきた人達の分ですねぇ。」
フェイグランス 「多分ね。」
DM 「机の上には、ダークエルフが遊んでいたと思われる、タロット・カードが並んでいる。」
ルイ 「ほう、タロットですか。 面白いですね。 貰っていきましょう。」
フェイグランス 「よし、これですぐ近くには敵がいないと。 まださっきのホールドパーソンは持続時間内だよね?」
DM 「うん。」
フェイグランス 「では、さっきの牢に戻って、ダークエルフの一人にE・S・Pだ。」
DM 「抵抗は…(ダイスをふって)失敗している。 相手の思考が読めるよ。『ここからどうやって出よう』とか考えているけど。」
フェイグランス 「よし、と。 では、お前達は何故俺達をここへ連れてきた?」
DM 「相手は黙っているけど、『ガゼリアの軍に提供して、見返りを貰う為だ。』と、心に浮かぶ。」
フェイグランス 「どうやって、我々を石化から解放した?」
DM 「それは、知らない。 石像のまま持ってきたら、突然生身に戻ったので驚いた。と。」
ルイ 「向こうにとっても不測の事態だったわけですね。」
フェイグランス 「20代後半くらいの、不思議な目の色の男と、お前達は組んでいるのか?」
DM 「『人間など、知らん』と。 何故そんなことを聞くのか、わからないといった感じだね。」
フェイグランス 「じゃあ、あれは別口で、ダークエルフを利用したわけだ。」
ルイ 「きっと、そうですね。」
フェイグランス 「ここには、あとどの位お前の仲間がいる?」
DM 「『族長をはじめ、10名以上。』」
フェイグランス 「それは、手強いな。」
ルイ 「武器のありかも聞いておいて下さい。」
フェイグランス 「あいよ。 聞く。」
DM 「ダークエルフは黙っているけど、さっきの部屋の近くにある倉庫に保管してあるようだね。」
ルイ 「それにしても、族長がいるとなると、厄介ですね。」
フェイグランス 「逃げるだけでいいわけだから、戦わないで済む方法でも考えよう。」
ルイ 「そうですね。 ふふふ、しかし…ふふふふ。」
フェイグランス 「どうしたよ??」
ルイ 「いえね、大脱走って感じで面白いですね、こういうのも。」
フェイグランス 「そうだね。(笑)」
ルイ 「さし当たっては、装備を取り戻しましょう。」
フェイグランス 「あいよ、ではさっき情報を聞いた方に。」
DM 「さっき、タロットカードを手に入れたところから、少し行ったところに扉がある。 おそらく、ここが倉庫だと思われるよ。」
ルイ 「入ってみましょう。 そーっとね。」
フェイグランス 「そーっと。」
DM 「では敏捷度のチェックをどうぞ。」
ルイ 「む、成功です。」
フェイグランス 「俺もだ。」
DM 「二人とも成功か。 では、君達の目の前にネット(網)がパサリと落ちる。 どうやら、扉を開けるとネットが下りてくる仕組みのようだね。」
ルイ 「ってことは、周りに敵は?」
DM 「今は見当たらない。 ここは2ブロック四方の部屋で、正面と右側に扉ね。」
ルイ 「ふむ。 折角我々がネットにかかっても、トドメをさす相手がいなければ話になりませんよね?」
フェイグランス 「さっきの騒動の時に、こっちにきちゃったんじゃないの?」
ルイ 「それも考えられますが、一応やってみます。『うおー!うごけない!』とちょっと言ってみる方向で。」
フェイグランス 「じゃあ、俺もエルフ語で。 『なんだ、この網は〜! ほどけ、コンチクショー!』」
DM 「すると、右側の扉が勢いよく開いて『チャーンス!』とエルフ語で叫びながら、一匹のダークエルフが。 しかし、網にかかっていない君達の姿を見て、驚いている(笑)。」
ルイ 「ふはは、逆に罠にかかりましたね! さぁ、フェイグランス、やっておしまい!」
フェイグランス 「あいあいさー!」
 
戦闘は1ラウンドで片がつく。
 
DM 「上手く行かないもんだなー。」
フェイグランス 「軽いカルイ。」
ルイ 「残り、9人ですか。 なんかこのまま行けそうな気がしてきました。」
フェイグランス 「1人ずつかかってきてくれると楽なんだけどな(笑)。」
ルイ 「まぁ、そうですね。 で、ここに装備はありますか?」
DM 「いや、ここにはネットの仕掛け以外は何も。」
ルイ 「ふむ。 では正面の扉ですね。」
フェイグランス 「さっきダークエルフがでてきた、右側の扉は?」
DM 「ああ、そこは待ち伏せの為に作られた小部屋でね。 1×1で椅子が1つあるだけだ。」
フェイグランス 「なるほど。」
ルイ 「で、正面の扉ですが…」
DM 「あけると、そこは壁にそって棚が置いてあり、そこにはワインがずらりと収められている。 また、隅っこの方に君達の装備と、宝箱が2つ。」
フェイグランス 「おーっ、やったね。 これで100人力。」
ルイ 「族長が出てくる前に手に入ってよかったですよ。」
フェイグランス 「一応、宝箱の方も。」
DM 「普通にあける?」
フェイグランス 「調べたりしたいけど、盗賊のマリュータみたいな技術を持っている訳じゃないからね。 素直にあけるよ。」
DM 「はい、どちらも罠や鍵などはなかったようで、すんなり開くよ。 中には短剣が1振、宝石2つ、銀貨2000枚。」
ルイ 「ちょっとした収穫ですね。 あとで鑑定してみましょう。」
 
装備を装着し、通路を進む二人は、通路の壁に剣の絵が彫られている場所で立ち止まる。
 
フェイグランス 「これ、何だと思う?」
ルイ 「罠…かもしれませんが、自分達の住処の、これほど良く通りそうなところに罠を仕掛けるのも考え物かと。」
フェイグランス 「一応、隠し扉がないか、探してみようか。」
DM 「エルフのフェイグランスは3分の1で発見か。 うん、この剣の部分をおしながらだと、壁をスライドさせることが出来るようだ。」
フェイグランス 「凝った作りだな。 ごりごりごりごり。(扉をスライドさせる仕草)」
DM 「中は1ブロック四方の小部屋だね。 ここにはお金がずらっと並んでいる。 1400PP、3000CP、2000SP、4000EPと、小形化のポーションが1つ、スクロールが2巻。」
ルイ 「大収穫ですね。 戦利品として頂きましょう。」
フェイグランス 「もう、袋に詰めてるぜよ。 けけけ。 ルイ、ちょっと周りを見張っててよ。」
ルイ 「合点合点ですよ。 ふふふ、宝はいただきです。」
DM 「どっちが悪人なんだか(笑)。」
ルイ 「ふっ、この世に悪人がいるとしたら、それは私に刃向かう連中の事です(笑)。」
フェイグランス 「おいおい!(笑)」
ルイ 「まぁ、善悪なんて相対的なもんですよ。」
フェイグランス 「ま、今は悪人でもいいや(笑)。 壁にラクガキでもしていくか。」
ルイ 「そうですね。 えーと、『ルイ参上!』」
フェイグランス 「『フェイグランスもいるよ!』」
DM 「程度低いぞ(笑)。」
ルイ 「他に思い浮かばなかったんです(笑)。」
フェイグランス 「現代なら器物破損の罪だね。」
ルイ 「なーに、拉致監禁に比べればマシでしょう。」
フェイグランス 「それもそうだ。 こっちは強盗殺人に器物破損っと。」
ルイ 「む、むぅ。」
DM 「RPGの世界だからねぇ。」
ルイ 「ささ、それよりも進みましょう! 時間もありません。」
フェイグランス 「だね! 鑑定は後回しだ。」
 
洞窟を進む2人は妨害らしい妨害もうけず、出口に向かって進む。
 
フェイグランス

「うーん、おかしいな。」

ルイ

「おかしいですね。」


【NEXT】