ムーンエンド・キャンペーン第ニ部 第6章 【誕生】

 

前回のプレイから4日後、プレイヤーが再び集まる。
 
ジョン 「ふふふ、今回からはレベル10だぞ。」
イーグル 「そういえば、俺もレベル10だ。」
DM 「マリュータもだね。 君達もネームレベルが板についてくる頃だね。」
ジョン 「ネームレベルってなんだ?」
DM 「いわゆる騎士とか、ドルイドとかそういったものに転職できる上に、王に認められれば領主なんかにもなれるレベルだと思ってくれ。」
ジョン 「ってことは、この世界の領主はみんなレベル9以上?」
DM 「いや、他の貴族とかは別だよ。 プレイヤーキャラクターが、D&Dルール上で新たな領地の領主という役割をやりたければ、目安としてこのレベルが必要だと。」
ジョン 「なるほど。 なんにしてもパラディンにはなれるわけだ。」
DM 「なれるね。」
ジョン 「このキャンペーンをはじめたばかりの頃は、パラディンになれるほどレベルが上がればいいなとは思っていたけど、本当にここまでこれるとはな。 DM、がんばった!」
エフェ 「なったところで終了だったりして。」
ジョン 「ぅおーい。」
DM 「安心してくれ、まだまだ話は用意してあるよ。 期間とメンバーが許せば、君達の冒険はこれからも続く。」
ルイ 「いいことですね。ふふふ。 楽しみがまだまだ続きます。」
ジョン 「ルイは第一部が終了したところでドルイドになったんだもんなー。 羨ましい。」
イーグル 「転職すると、強くなるのか?」
ルイ 「職にもよりますね。 戦士は騎士になったほうが強いですが、僧侶はドルイドになっても特性が変わるだけで…たとえば、アンデットに対する優位性がなくなって、重い鎧も着られなくなる代わりに、攻撃力が上がったり、ドルイド専用の呪文を覚えたりします。」
イーグル 「なるほどな、じゃあ俺はこのままでいいや。」
エフェ 「ドルイドになるには、師匠も探さなきゃいけないし、そのワールドに対する定数もあったりするもんね。 ルイはついてるわよ。」
ルイ 「ええ、幸い良い師匠が見つかってラッキーでしたよ。」
フェイグランス 「破門されない様に気をつけないとね。」
ルイ 「それが、目下一番の恐怖という奴です。 変なことは出来ませんね。」
フェイグランス 「性格は変だけどね。」
ルイ 「いわれると思いました。 そろそろバリエーションを増やしたツッコミをお願いします。」
フェイグランス 「じゃあ、正確にヘンタイだけどね! でどうよ。」
ルイ 「それ、不味い方向にいってるじゃないですか(笑)。」
イーグル 「ネームレベルになっても、落ち着きとかはレベルアップしないんだな。」
エフェ 「ほらほら、はじめるわよ。」
DM 「おう、今情報を整理しおわったから、始めようか。」
一同 「パチパチパチ(拍手)」
DM 「前回のシナリオで”盗賊都市”シェルトへとやってきた君達一行は、そこで出会ったパール少年や犬のジョン、そしてパールとマリュータの養父であり、エフェとの因縁を持つアルンとともに、領主同士の抗争に巻き込まれたんだ。」
エフェ 「そうだったわね、確かこっちの領主が盗賊ギルドの親玉の”ディーダー”で…」
フェイグランス 「向こうがカステラの町の領主で、実はジョンの仇の”エル”だったと。」
ジョン 「そうだそうだ。 今まで追ってきたものが一気にやってきたんだな。」
ルイ 「マリュータの養父はエフェの父親の仇みたいなものだったりと、我々も意外なところで接点があったものですね。」
DM 「そう。 しかしジョンが追っていた”エル”はエルであってエルではなかった。 彼は第一部でマスターことホバートに取り付いていた”悪霊”と同じものに取り憑かれており、その行動は全て”悪霊”の意思によるものだったと。」
ジョン 「んで、それを倒せるのはダークスレイヤーだけだったんだけど、それは第一部の最後で壊れちゃったんだよなー。」
エフェ 「また出会ったら厄介だわね。」
ルイ 「対策を考えておかなくてはなりませんね。 …タレスティウスは何か知らないんですか?」
DM 「タレスティウスは、前回の事件のあと、すぐにアルンを伴って旅に出たよ。 アルンはタレスティウスが、パールと犬のジョンはエフェが預かることになっていたからね。」
ルイ 「ああ、遅かったですか。」
DM 「予め聞いていたことにしてもいいけど、その時には『はぁてのう…』と答える程度だったと思ってくれ。」
ルイ 「自分で何か考えた方がよさそうですね。」
ジョン 「ダークスレイヤーと同等の剣が、確かこのムーンエンドにはあったんじゃなかったっけ?」
DM 「そうだね。 でもそれらは本当に伝説と言った感じで、実際に存在するのかどうかも怪しいものだけど。」
ジョン 「そのうちの1本があったのだから、望みはある!」
エフェ 「そうね、それに他に方法が思い浮かばないし。」
イーグル 「どこにあるかも、存在するかどうかも分からない剣か。 んで、俺達はこれからどうするんだっけ?」
ルイ 「前回の話では、我々がパール少年と犬のジョンを安全なところまで届けることになっているのですよ。 とりあえず、ディーダーの目が届かないところまで連れていって、生活費でも渡せば大丈夫じゃないですかね?」
フェイグランス 「俺らと一緒に旅をしているよりは、安全だろうね。 次の町までで大丈夫かな?」
エフェ 「次の町は、あのエルがいる”カステラ”よ? 大丈夫かしら。」
イーグル 「大丈夫じゃないの? この子供を追っているのはディーダーだけだろうしな。 まぁ、俺達に対する人質に取られない様にしなけりゃならんが。」
フェイグランス 「エルを倒せれば、問題ないけどな。 それから、確かディーダーは毒草だかの農園を持っていて、それをエルは手に入れたいとかいってたよね。」
エフェ 「そうね。」
フェイグランス 「その農園だけでも、燃やしていこうよ。」
ジョン 「賛成賛成!」
ルイ 「私も異存はないです。」
エフェ 「じゃあ、今後の方針としては、デマバンド山に向かう旅を続けながら、パール君達を安全な場所に落ち着かせて、農場を破壊して、出来ればエルを倒すと。」
ルイ 「そうですね。」
ジョン 「魔剣を探すのは?」
エフェ 「在処の手掛かりでもあったら、寄り道してもいいわよ。」
イーグル 「そうだな。 そういう事でいいか。 しかし、次の町の名前は”カステラ”かよ。 うまそうだよなぁ。」
ルイ 「私もそれは思っていましたよ。 ふふふ。」
DM 「”カステラ”の町でつくられたお菓子が人気でね。 そのお菓子がこの町の名前で呼ばれるようになったんだそうだ。 都会のシャスターで一年間暮らしてきたエフェなら、それが現代で言うところの”カステラ”と同じ物だと知っていたり、食べたことがあってもいいよ。」
エフェ 「ふふーん、カステラはね、ふんわりしていて甘くてとってもおいしいのよー。」
ルイ 「おおー!」
フェイグランス 「カステラ食いに行こう!」
ジョン 「おおぅ!」
イーグル 「前回全く歯が立たなかった奴の本拠地に乗り込むってのに、コイツ等の気楽さはどーだよ。 わけわかんねーぞ。」
ジョン 「それが俺達!」
イーグル 「そうだったな(笑)。」
DM 「君達には、ホセも同行するからね。 彼も毒薬の農園は始末したいそうだ。」
ジョン 「よーし、行こう。」
    
一向はシェルトの町を出発する。
 
ジョン 「追っ手がかかったりしないかな?」
エフェ 「警戒しながら進みましょ。」
DM 「しかし、それから1日経ってもディーダーの追手は姿を見せないね。」
フェイグランス 「前回の戦闘でかなり被害を受けていたみたいだから、終った取引の手掛かりしかもっていない子供1人を捕まえるのに、俺達と事を構えることもないと、判断してくれていればいいんだけどね。」
ルイ 「あれだけの損害があったのですから、これ以上戦力を消耗したくないでしょうしね。」
DM 「さて、朝になったところで、君達の行く手に村が見えてきた。」
ジョン 「お、あれがカステラの町かな?」
エフェ 「DMは村って言ってなかった?」
DM 「そうだね、町というには建物の数が少ない様に見受けられる。 それから、村の方から風に乗って甘ったるいニオイが漂ってくるよ。」
ジョン 「お菓子を作っているんじゃないの? 村の建物の煙突とかから煙は出てる?」
DM 「それが、全然出ていない。 段々近づいていくと分かるんだけど、村に近づくに連れて足元の草や、街道脇の木なんかが黒ずんでいたり、その状態で枯れていたりするのが目に付くようになる。」
ルイ 「これは、なんか不味い雰囲気ですね。 カステラまでは何日かかるんでしたっけ?」
DM 「ホセの話では、3日の筈だ。」
ルイ 「すると、ここは途中の名もない村というわけですか。 街道沿いだから、宿場として成り立っているのかもしれませんね。」
DM 「そういう事が考えられるね。 そして、その村の入り口までやってきたけれど、村の中で動いている人は一人も見つからず、恐ろしいほどの静寂があたりを包んでいる。」
ルイ 「動いている人? ということは、止まっている人はいるわけですか。」
DM 「そう、これから言おうとしてたんだけど、村の通路に男が1人倒れているのが見える。」
イーグル 「駆け寄って、起こそう。 大丈夫か? しっかりしろよって。」
DM 「男は既に冷たくなっているね。 また、男の体は全体的に黒ずんでいて、ところどころに茶色い斑点が出ている。」
イーグル 「なんかの病気かよ。 他に人がいないか、探してみるぞ。」
ジョン 「パールには、見せたくない光景だな。」
エフェ 「そうね、パールは私と村の出口で待ってましょ。」
パール 「うん。」
DM 「イーグルが探してみると、村のあちらこちらに人が倒れている。 みんな先ほどの男と同じ状態で死んでいるね。」
エフェ 「病気だとしたら、伝染病かしら。 だったら、早くここを離れないと。」
ジョン 「いや、まずは生きている人を探そう。 まだ家の中とかにいるかもしれない。」
DM 「村は全部で20世帯弱といったところなので、すぐに探索し終わるんだけど、残念ながら生存者は見つからない。 床に倒れている者、ベッドに横たわって倒れた者など、様々だ。 そして全員が苦悶の表情をうかべたまま死んでいる。」
ルイ 「家の中の様子はどうですか? 長く苦しんだのなら、療養した跡や薬草などがあると思うのですが。」
DM 「そうだね。 しかし家によっては普通の食事の用意がされていたり、これから薪を集めに行こうとしたのか、作業着と鉈(ナタ)を身につけたまま玄関で倒れている男もいる。 村の中央にある広場では、小さな子供達がおもちゃで遊んでいた最中に倒れたように、それらを握り締めたまま倒れている姿も見られる。」
ルイ 「むごたらしい…。 これは病気というよりも、毒ガスか何かの類ですかね。」
フェイグランス 「病気ならこんなに急に、しかも一度に死なない筈だねぇ。」
ホセ 「そうだな。」
ジョン 「誰の仕業なんだろう。」
ルイ 「エルかディーダーだとは思います。 彼等も毒がどうこうとかいっていましたしね。 ただ、何の理由でこの小さな村を壊滅させたのかが分かりません。 そしてディーダーにはやはり余力がないとは思うのですがね。 前回の3つ巴の戦闘の前にも、我々と戦ってそれなりに消耗している筈ですから。」
ジョン 「何にしても、許せないな。 罪がない子供までまきこむなんて。」
フェイグランス 「長くここにいると、俺らも危ないかもよ?」
ジョン 「埋葬くらいはしていきたいんだが…。」
ルイ 「いえ、やはり危険ですよ。 ここは、もう毒草を生産できなくすることで供養としましょう。」
イーグル 「祈りだけは上げておくぞ。」
ジョン 「頼んだ。」
 
それから2日後の昼、一行はカステラの町に到着する。
 
DM 「町の入り口に門番らしい男が2人立っていてね、通行人をチェックしているようだ。」
ホセ 「おかしいな。」
ルイ 「どうかしましたか?」
ホセ 「いや、カステラの町には門番なんぞいなかった筈なんだが。」
ルイ 「事情が変わったと言うところですか。」
フェイグランス 「俺達、手配されていたりして。」
ルイ 「その可能性もありますねぇ。 その時には逃げましょう。」
ジョン 「んじゃ、俺とマリュータとルイで先にいこう。 他の人らはあとで来てくれ。」
エフェ 「いいわよ。」
パール 「ここでカステラが食べられるんだね。」
エフェ 「うんうん。 楽しみねー。」
フェイグランス 「エフェもだんだん保護者っぽくなってきたな。」
イーグル 「意外と、いい母親になれるかもしれないぞ。」
エフェ 「え?あら?まぁ。(照れている)」
フェイグランス 「それは、ない!(エフェ:「(殴)」)って、痛ったぁー!」
エフェ 「まったく…。」
DM 「さて、どつきあっている後ろの人は置いといて(笑)、ジョン達は門番のところまでやってきたよ。」
ジョン 「んー、とりあえず、自然に通り過ぎてみるか。」
ルイ 「そうですね。」
DM 「門番の兵士から、『待った待った!』と声をかけられるよ。」
ジョン 「立ち止まって振り向く。」
門番 「お前さん達、余所からこの町にきたのか?」
ジョン 「そうだけど。」
門番 「ならば、悪いが検査させてくれ。」
ルイ 「かまいませんが、なんの検査でしょう?」
門番 「うむ、最近この町の周辺で性質の悪い病気が流行っているらしくてな。 伝染病かも知れんから、感染者は町に入れられんのだ。」
ジョン 「それって、さっきの村の病気の事かな…?」
ルイ 「余計なことは、いわないほうが吉ですよ。」
DM 「門番が小屋の方に向かって合図をすると、医者らしき男が君達の方にやってきて、首筋や眼球、手などをしらべたあと、『ふむ、どうやら全員大丈夫のようですな。』という。」
ルイ 「ほっ、実はちょっと心配だったのですよ。 よかったよかった。」
ジョン 「(門番に)じゃあ、入っていいか?」
門番 「ああ、お前さん達、余所からきたならこの町名物の”カステラ”を食ってみろ。 うまいぞ。」
ジョン 「おう、ありがとう。 いくぞー。」
DM 「というわけで、ジョン達は無事に町に入りました。」
エフェ 「次は私たちの番ね。」
イーグル 「俺は病死した人に触れたりしているから、危ないかもしれないな〜。」
DM 「先ほどと同じように、医者が出てきて検査する。 イーグルもシロだそうだ。」
イーグル 「ほっ、良かった。」
DM 「その医者が、犬のジョンをみて『なんだね、この犬は?』といっているけど。」
エフェ 「(パールを指して)弟のペットなんですよ。」
イーグル 「なるほど、弟って事にしたのか。」
医者 「ふむ…まぁよかろう。」
エフェ 「私たちのチェックも終ったの?」
DM 「ん、イーグル、パールに続いてエフェ達もチェックをうけるよ。 首筋や眼球、手や脚や二の腕や…」
エフェ 「(医者の足の甲を踏みつけて)ど・う・や・ら・異常なさそうね?!」
医者 「(痛みをこらえながら、焦って)お、おう、怪しかったのでな、とと特に異常はなさそうじゃ。」
フェイグランス 「エロい医者だね(笑)。」
DM 「というわけで、全員シロと判断されて、町へ入る事を許可されたよ。」
ジョン 「お、きたきた。 うぉーい、こっちだぞー。」
イーグル 「合流したら、一旦宿屋に落ち着こうぜ。」
フェイグランス 「そうだね。」
DM 「ここも街道沿いの町だからね。 宿は簡単に見つかるよ。 中に入ると、『ウィングが…』とか『ジャコバンが…』とか、どのテーブルからもそんな会話が聞かれる。」
ジョン 「なんだろ。」
エフェ 「”ウィング”とか、”ジャコバン”といえば国の名前よね?」
ルイ 「でしたね。 第一部の舞台になった”ランカスター”と、今いる”ハーディアル”と並ぶ4大国のうちの2つなんですよね?」
DM 「そういう事。 ジャコバンは土地の肥えた豊かな国だ。 ウィングはこのムーンエンド島から分離した島にある国で、太陽神ラーラを国教としており、”太陽王国”とも呼ばれる。」
エフェ 「戦争にでもなったのかしらね。 まずは飲み物でも注文しながら、店のマスターに話を聞いてみましょ。」
DM 「OK。 マスターの話では、太陽王国ウィングで暗黒神ドールの信者達による内乱がおこっているのだそうだ。 暗黒神の勢力は意外に強く、ウィング側では苦戦しているようだが、隣国のジャコバン王国がウィングに援軍を送ることを決めたらしい。」
エフェ 「ふむふむ。」
酒場のマスター 「これで暗黒神側も終りだろう。 奴等は魔法を使ったりして厄介だが、数は少ないからな。」
フェイグランス 「そういえば、ルイの親父さんって…」
ルイ 「ジャレスの話だと、暗黒神のハイプリーストになったとか言ってましたね。 おそらくその内乱にも関わっていると思います。」
フェイグランス 「いけば、関わる事になりそうだね。」
ルイ 「でも、王国も大丈夫なのであれば、今いく事もないでしょう。 会ったら聞きたいことは山ほどありますがね。」
パール 「はやく、カステラを食べにいこうよー。」
ジョン 「じゃあ、いくか!」
イーグル 「俺もいこう!」
ルイ 「私も。ふふふ。」
ホセ 「ちょ、ちょっと待ってくれ。 俺と一緒に情報収集する奴も残してくれよ。」
エフェ 「じゃあ、私とフェイグランスとマリュータは情報収集ね。」
フェイグランス 「あらら。 残念。」
イーグル 「ちゃんと、折詰にしておいてもらってやるよ。」
フェイグランス 「頼むよ。」
ルイ 「では、早速そのカステラとやらを食べにいきましょうかね。 いそいそ。」
パール 「行こう行こう〜!」
DM 「ということで、分離行動だからエフェとフェイグランスは別室によろしく。」
フェイグランス 「んじゃ、お菓子でも買ってくるかな〜。(退室)」
エフェ 「終ったら呼んでね。(退室)」
DM 「そいじゃ、ジョン、イーグル、ルイ、パールと犬のジョンは宿屋を出て、大通りに沿って歩いていく。」
ルイ 「こうして、各地の味覚を楽しみながら旅をするのは、良いものですね。」
イーグル 「平和な旅だと、もっといいんだがな。」
ジョン 「平和になったらか。 面白そうだな、それ。」


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