ムーンエンド・キャンペーン第ニ部 第6章 【誕生】

 

ルイ 「もっとも、平和になれば、我々のような冒険者の出番はありませんがね(笑)。」
イーグル 「冒険が終った後の為に、就職口も探さなきゃならんか(笑)。」
ルイ 「宮仕えするつもりがあるなら、それなりにあるでしょうけど。」
イーグル 「ルイはしないのか?」
ルイ 「私は、ドルイドですからね。 戦いが終ったら森で静かにくらしますよ。」
DM 「さて、そんな会話をしながら君達が歩いていくと、『あった、あった!あの店だよ!』とパールが看板のついた店に駆け寄って行く。」
ジョン 「カステラ屋って、一件だけなの?」
DM 「一件だけだよ。」
イーグル 「有名なお菓子だとか言うから、もっと通り一面にお菓子屋が並んでるもんだと思っていたんだがなぁ。」
ジョン 「店によって、元祖とか、本舗とか、家元とか(笑)。」
DM 「長持するお菓子じゃないからね、他の町へ出荷するのも大変だし、輸送の手段も保管の手段も少ないこの時代では、あまり沢山作っても仕方ないんだよね。」
ルイ 「当然、この町の人は食べ飽きているでしょうしね(笑)。」
ジョン 「エフェはシャスターでも食べたんじゃなかったっけ?」
DM 「そう。 でもあれは魔法で冷却してとか、料理人がシャスターでつくるとかしない限りは食べられないよ。 向こうでは高級品だ。」
ジョン 「贅沢してるな、あいつは(笑)。」
イーグル 「とにかく、入ろうぜ。」
DM 「店の扉を開けると、扉にとりつけられた鈴がカランカランと綺麗な音をたてる。 店は木造平屋で、店内は清掃が行き届いており、つい最近までシェルトにいた君達から見ると、まるで高級店のようにすら見える。 注文を受けるカウンターと、その奥の厨房、そしてそれぞれに椅子が4脚ついたテーブルが5つ、並んでいるよ。」
イーグル 「ガラスケースにカステラが展示されてたりはしないのか?」
DM 「おおきなガラスはまだまだ高級品だからね。 できあがった品は、厨房の方に保管してあるようだ。」
ジョン 「ふーん、この世界には、もうガラスがあるんだ。」
ルイ 「ありますね。 これまでにも見たことがありますし。」
DM 「さて、店員らしい若い男がやってきて、『いらっしゃい。ご注文は?』と聞いてくるよ。」
イーグル 「カステラ以外にも、何かあるのか?」
DM 「カステラにも大小あってね。 大きいのが3GP、小さいのが1GP、飲み物は2GP、それにサラダやつまむものなどが3GPだ。 全部セットだと、9GPのところを8GP。」
イーグル 「サラダ付きか。 フェイグランスの奴が喜びそうだな。 セットを持ち帰り用でくれ。 パールの分とあわせて、3つな。」
ジョン 「俺はエフェとマリュータにも買っていってやろうかな。 自分の分と合わせて、3つ。」
ルイ 「じゃあ、私はホセに。 甘いものを食べるかどうか分かりませんが。 2つください。 そういえば、犬のジョンはどうしてます?」
DM 「君の方をみながら、ヨダレを垂らして尻尾を振ってる(笑)。」
ルイ 「…一つ追加願います。(笑)」
DM 「ほい。 店員はニコニコとセットを用意して君達に渡す。」
イーグル 「結構買ったからな。 んじゃ、帰るか。」
ジョン 「おう。」
DM 「ジョンがルイの足にじゃれ付くよ。」
ジョン 「くーんくーん。」
DM 「そうじゃなくて、犬のジョン!(笑)」
イーグル 「ややこしいな(笑)。」
ルイ 「はい、はい、帰ったら上げますからね。 おあずけ。」
犬のジョン 「くーん。」
DM 「君達が買い物を終えて帰ろうとすると、店員が呼び止めるよ。」
ジョン 「なんだなんだ?」
店員 「実は、先週から『カステラ大食いコンテスト』をやっていましてね。 いかがです?参加してみませんか?」
イーグル 「ほほー。」
ジョン 「面白そうだね。」
ルイ 「つきあいましょう。ふふふ。」
DM 「これは、カステラをいくつ食べられるか競うもので、新記録を出したら代金無料+賞金50GP。 記録タイならば代金無料。 駄目なら、食べた分の代金を支払う。」
ジョン 「今の新記録は?」
DM 「17個だ。」
ジョン 「よし、チャレーンジ!」
DM 「始めましょうかね。 まず最初の10個くらいは余裕で食えるのよ。」
ルイ 「太りそうですねぇ。」
DM 「で、次からは耐久力のチェック。 最初は+4で、次から+3、+2、+1、+0、−1…と、だんだん修正が下がっていくというわけ。」
ジョン 「ここから7個は結構つらいな。 ゲーップ。 すでに失敗だ(笑)。」
DM 「ジョン10個と(笑)。」
パール 「兄ちゃん、だらしないなぁ。」
ジョン 「くそー、30GP持って行かれた。」
イーグル 「次は俺だ。 耐久力にはちょっと自信があるぜ。」
ルイ 「耐久力13ですか。 期待できそうですね。」
イーグル 「1回目、成功。 2回目…ありゃ、20だしちまった。」
DM 「イーグル11個!」
ルイ 「たいしたことありませんね(笑)。」
イーグル 「ちょっと今日は体調が悪いらしい(笑)。」
DM 「33GPね。」
イーグル 「痛ぇ。」
ルイ 「最後は私ですか。 もう棄権したいくらいですが。」
ジョン 「一度言ったら、最後までやる!」
イーグル 「そうだそうだ。 ゲーップ!」
ルイ 「仕方ありません。 南無観世音菩薩。 天にまします我らがガイア神もご照覧あれ!」
イーグル 「何を祈ってるのか、わけわからんな(笑)。」
ジョン 「ご笑覧しといてやるよ。」
ルイ 「こうなれば、やるのみです! 成功、成功、成功、成功、成功…おおお!」
イーグル 「すげー!」
ルイ 「また成功!」
ジョン 「トップタイまで、あと一個!」
ルイ 「はぁはぁ、せ、成功!」
店員 「素晴らしい、トップタイです!」
ルイ 「次で新記録ですよ。 うっぷ、ゲープ。 ああ、駄目です。」
イーグル 「とうとう、失敗したか。」
ジョン 「いや、頑張った(笑)。 ダークホースだったなぁ。」
ルイ 「これで、無料ですね。」
DM 「そういうこと。 さて、突然だけど、君達は眠くなってきた。」
ジョン 「あ、あれ?おかしいにゃ。 食べ過ぎたかにゃー。」
イーグル 「お、俺もねむいぜ。 わけわかんねー。」
ルイ 「むにゃむにゃ、もう食べられないにゃん。」
イーグル 「寝るなー!」
ルイ 「あいたたた、暴力反対です。」
DM 「眠らずに済むかどうかは、対パラライズのセーヴィングスローを、マイナス5の修正付きで成功させてちょうだいな。」
ジョン 「あれ、単に食べ過ぎじゃないのか! 失敗だー」
イーグル 「俺も失敗だ。 ね、ねない…ぞ…ぐー。」
ルイ 「私は成功ですよ。 もう、人を殴っておいて寝るのは反則です。」
パール 「兄ちゃんたち、ねちゃったよ?」
ルイ 「そうですね。 重い装備の人ばかり寝てしまって…。いや、それよりも周りを警戒しますよ。 どうやら私たちはハメられたようです。」
DM 「そのようだね。 店の奥から5人の男達が出てきて、君達を取り囲んだ。」
ルイ 「何のつもりか知りませんが、そう簡単には行きませんよ。 覚悟しませい。」
パール 「かっこいいや。」
DM 「イニシアチブ。 こっちからだ。」
ルイ 「まずいですね。 やはり1D6は苦手です。」
DM 「4人が呪文を唱え始めた。」
ルイ 「なんと、マジック・ユーザーでしたか!」
DM 「そう。 ルイにウェブ(魔法のネットで相手の動きを封じる呪文)が4回。 呪文セービングに4回成功すれば大丈夫だよ。」
ルイ 「それは、辛いです。 かかってしまいました。」
パール 「ルイ兄ちゃん…。」
ルイ 「す、すみません。」
DM 「パールも店内を逃げ回るんだけど、やがて男達につかまってしまう。 ただ犬のジョンは無視されているようだけどね。」
ルイ 「犬のジョンは頼りになるのか、ならないのか。」
DM 「君達は拘束されて、店の地下室へと連れて行かれるよ。 起きているのはルイとパールだけだけどね。」
ルイ 「しかたないですね。 道順を覚えておきましょう。」
DM 「ほい。 地下は牢屋になっているらしく、君達は装備をすべて取り上げられて閉じ込められ、君をここへ運んできた男の一人がなにか呪文のような言葉を唱えたあと、去っていった。」
ルイ 「あーあ、私は可哀相ですねぇ。 牢の中の様子はどうです?」
DM 「全体的に暗くて見えづらいんだけど、闇に目がなれてくると、徐々にあたりが見えるようになってくる。 牢は隙間のない石が敷き詰められ、扉のところは鉄格子になっているよ。 また向かい側にも同じ牢屋があって、そちらにはエルフが一人、囚われている。」
ルイ 「まさかフェイグランスではないですよね?」
DM 「うん。 しかしその顔には見覚えがあるよ。 シェルトの町でゴミの山から引きずり出して君達が治療した、”ジェルフィンデル”だ。」
ルイ 「ああ、たしか北の森の。 …森に帰ったんじゃなかったんですね。 声をかけられそうですか?」
DM 「残念ながら声はでないよ。 そして、ジェルフィンデルも気をうしなっているらしい。」
パール 「大丈夫、ジョンがきっと助けを連れてきてくれるよ。」
ルイ 「ああ、パールは話せるんですか。 ということは、スペル・ユーザーだけが声を封じられているといったところですか。 ジェルフィンデルが起きてもアテにはできなさそうです。 …ん?」
パール 「どうかした?」
ルイ 「いや、ここに囚われているという事は、ジェルも大食いにチャレンジしたんでしょうかネ。くくく。」
パール 「ルイ兄ちゃんが、にやけてる。 ま、いつもの事だよね。」
ルイ 「し、失礼なっ! って、話せないんでした。 これはストレスがたまりますね。 早く救出が来てくれることを願いますよ。」
DM 「それじゃ、入れ替わりー。 今度は君達が別室によろしく。」
ジョン 「ニボシでも買ってくるかー。(退室)」
イーグル 「相変わらず好きだな(笑)。(退室)」
ルイ 「マンガでも読んでましょう。(退室)」
DM 「ということで、エフェ、フェイグランス。 あと、マリュータとホセ。」
フェイグランス 「はいはい、ただいま。」
エフェ 「私たちは情報集めだったわね。」
フェイグランス 「酒場とか、町の通りとかで聞き込みかな。 じゃあ、俺は外行ってくる。」
エフェ 「じゃ、酒場では私が。」
フェイグランス 「はぅあ!!」
エフェ 「ど、どうしたのよ?」
フェイグランス 「ランバードの町のサラダ屋に行くのをすっかり忘れてた。」
エフェ 「そんなん、もう随分前の話じゃないの。 忘れなさい忘れなさい。」
フェイグランス 「がっくり…いってくる…。」
マリュータ 「大丈夫か? あれ?」
エフェ 「只でさえ道に迷うものね。 あなたも付いていってあげて。」
マリュータ 「分かった。」
エフェ 「さて、私は酒場で情報収集だわね。 例の農園の手掛かりと、病気の事をしりたいから、旅人とかよりもこの町の人とかがいいかな。 あと、このあたりを拠点にしている商人なら、情報豊富かも。」
ホセ 「そうだな。 ここは俺が一緒にいるよりも、お前さん一人の方がスムーズだろ。 よろしく頼む。」
エフェ 「はいはい。 それじゃあさっきの条件に合う人達のテーブルを探して、同席させてもらえないか聞いてみるわよ。」
DM 「条件に合う人達は、当然それなりにいるね。 では、商人風の中年男性のテーブルがあったという事で。」
エフェ 「(テーブルの脇によって)こんにちは〜。 よければ、同席させてもらってもいいかしら?」
商人A 「ああ、いいともいいとも! おい、ちょっとそこ空けろ」
商人B 「おう、俺の隣が空いてるぞ。」
商人C 「いや、こっちの方がテーブルが綺麗で…。」
エフェ 「いい扱いだわ(笑)。」
 
一方、通りに出たフェイグランスは…
 
フェイグランス 「すいませーん、宿屋への帰り道を教えてもらえませんか〜。」
マリュータ 「(後ろからやってきて)情報を聞くんじゃなかったのか?」
フェイグランス 「おや、マリュータ、助かったよ(笑)。」
マリュータ 「付いてきて正解だったようだな。」
DM 「2人が集めた情報をまとめてみると…」
  
あの病気の死者は、必ずまとまって見つかる。
死体が見つかったところでは、甘ったるい匂いがする。
例の病気が発生したのは、ほんの5日前。
白っぽい粉が風に乗って撒き散らされるのを見た。
最近、薬剤師が何人も行方不明になっている。
一昨日、この酒場でエルフが数人の男に捕らえられた。
北の森にはエルフの一族が住んでいる。 一昨日つかまったのは、その部族の一人らしい。
 
エフェ 「なるほどね。 そのエルフの名前は分かるかしら?」
商人B 「エルフの名前は、発音が難しいんだ。 たしか、じぇ…ジェ…じぇー???」
エフェ 「捕まえた人はどんな人?」
商人C 「見かけない顔だったなぁ。 どこの誰か分からんし、ローブを着ていたので実際顔が良く見えなかったし。」
エフェ 「ありがと、楽しかったわ。」
商人A 「え、もう、いっちまうのかい?」
エフェ 「連れを待たせているもので。(微笑) さて、部屋に戻ってみんなと合流しますか。」
DM 「君の背後で、『お前がちゃんと答えられないから…!』とか、『お前がスケベな目で見るからだっ!』とか言い争う声が。(笑)」
エフェ 「あらら、悪いことしちゃったわね(笑)。」
フェイグランス 「人気だねぇ、エフェ(笑)。」
エフェ 「たまに女性として扱われるのも、悪くないわ。」
フェイグランス 「そういえば、女性だったね、うん。」
エフェ 「こういうメンバーばかりだものねぇ…。」
DM 「さて、宿をとった部屋で集合ね。 さっきの情報とかを、お互いにまとめているわけだ。」
フェイグランス 「んだんだ。」
DM 「あと、ホセが酒場のマスターに聞いた話によると、9月11日に北の森の方から煙が上がるのが見えたそうだ。」
フェイグランス 「今日は、何日だっけ?」
DM 「9月13日だね。 煙が上がったのは一昨日だ。」
フェイグランス 「気になるね。」
エフェ 「そうね。 みんなが帰ってきたら、ちょっと行ってみましょうか。」
フェイグランス 「だね。 余所のエルフの集落がどうなっているかも興味があるし。」
DM 「と、君達が話し合っていると、下の酒場の方で『なんだ、この犬は?!』という声が聞こえてくる。」
フェイグランス 「酒場の方に行ってみるよ。」
エフェ 「同じく。」
DM 「酒場にはジョンがいてね…あ、犬の方ね。 君達を見つけると駆け寄って、服の裾を加えてひっぱる。」
エフェ 「服が汚れるー! フェイグランスにしなさい!」
フェイグランス 「こらこら!」
エフェ 「パールとか、他のは?」
DM 「見当たらないね。 ジョンはすごい力で引っ張るけど?」
エフェ 「ええい、服が汚れるのも厄介だから、行くわ。」
フェイグランス 「そういう問題かね?(笑)」
DM 「では、しばらく大通りを真っ直ぐ進んで、一件の店の前で止まった。 どうやらカステラ専門店のようだね。」
エフェ 「店なら、入っても問題ないわね。 扉を開けるわよ。」
DM 「(やや棒読み気味に)店の扉を開けると、扉にとりつけられた鈴がカランカランと綺麗な音をたてる。 店は木造平屋で、店内は清掃が行き届いており、つい最近までシェルトにいた君達から見ると、まるで高級店のようにすら見える。 注文を受けるカウンターと、その奥の厨房、そしてそれぞれに椅子が4脚ついたテーブルが5つ、並んでいるよ。」
エフェ 「む!」
フェイグランス 「どした?」
エフェ 「DMの喋りが単調だわ。 これは、きっとジョン達にも同じセリフをいったに違いないわ(笑)。」
DM 「しまった、2度目で心がこもらなかったか(笑)。」
エフェ 「ま、それはともかくとして、カステラとかが並んでいるの?」
フェイグランス 「ガラスケースに展示されているとか?」
DM 「おおきなガラスはまだまだ高級品だからね。 できあがった品は、厨房の方に保管してあるようだ。」
エフェ 「この世界には、もうガラスがあるのね。」
フェイグランス 「あるね。 割った事もあるし。」
DM 「君ら、反応が似てるよなぁ…(笑)。」
エフェ 「うわー、ルイ達と同じ反応だったんだわ、きっと!」


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