カルカメデスの夜歩き キャラSS-リュニ
キャラクターシート: アーシュラ アンナ キース リュニ ロック

(文:ぺけさん)

 設定その2、狂ってる方面が足りなかったので補強
 リュニの特徴、まとめ
  ○突発的に酒癖悪くなるよ
  ○突発的に男癖悪くなるよ
  ○突発的に自傷癖でるよ
  ○普通は礼儀正しいよ



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 外開き窓を開けると雨上がりにある独特の匂いが鼻をくすぐり、朝特有のどこか清々しい光が
 目を刺激する。
 少し目を細めながらリュニは自分のいる2階から、眼下の通りを眺める。
 少々生活臭を感じるゴミや、物乞いなどが気になるが、リュニのような表向きでない仕事をするものが暮らす町としては、このコルヴォ―サの町は、破格の清潔さだと思う。
 
 表向きではない仕事、主に踊り子とそれに付随するアレコレに関わってから随分経つ。
 とはいえ、リュニがこの仕事をどうしても選ばざる得ない状況にある身の上だったかと聞かれる
 と、別にそういうわけではない。
 リュニの能力で言えば、表の仕事である治療や護衛、探索など荒事方面ではあるが、
 それだけでも生計を立てることは可能だ。

 しかし、結果として今の仕事を選んでいる理由は3つほどある。
 1つ目は、基本的貞操観念という教育があまり無い地域で育っていた点。
 2つ目は、語学学習の為に一番効率の良い方法であった点。
 3つ目は、情報収集も同時に行える方法であった点。

 リュニの旅する目的である、面白い話、新しい場所の情報を集める上では一番適していると
 判断した。

 ”それだけではないだろ?”

 頭の中から男性の尊大な調子の声が聞こえるのを、頭を振って振り払う。
 この声は、幼い頃、朽ち果てた社に侵入し、神にあった時点から、事あるごとに聞こえてくる。
 それは時間や場所を問わず、
 どれだけ意識が混濁していても意味が理解できてしまう声だった。
 それは大抵自分の心の奥底の願望に近く、明らかに自分の心の声ではないと確信している。
 このどちらかが欠けていれば、単なる妄想癖と無視して生きる事も出来たはずだった。
 
 しかし、そうはならなかった。
 この声を振り払うように土地を替え、生き方を替えた。
 最初に酒に溺れた、その過程で今の仕事の基礎を夜の寝室で学んだ。
 その基礎が習熟され、技術として確立された頃になっても声を振り払う事は出来なかった。

 そのため、情緒不安定になる事も多いが、幸いな事に幼い容姿も相まって、
 仕事上において致命的な問題になるほどではなく、庇護欲を掻き立てられるという客も居た。

 いくつかの幸運が重なってしまい。結果的に徐々に壊れつつも、現在まで生き長らえてしまっている。

 思考が悪い方向に流れているのを感じ、拳で軽く頭を叩く、コツ、コツと20回ほど叩いたところで、戻ってこれたような気がして叩くのをやめた。

 着替えと身だしなみを済ませ、部屋から階下へと降りる。
 さほど大きくない酒場兼食堂では、朝方という事もあり、大体は昨夜一緒に居た男女のペアと、 何人かのまっとうな宿泊客が、談笑しながら食事をとっている。

 2、3階に宿屋を持つ、この酒場は規模こそ大きくないが、
 少々お金を持っている方々の隠れ家の1つでもあった。

 その分セキュリティはスラムの中ではしっかりしている部類で、専属の用心棒もいるのは良い
 点だ。
 
 「・・・起きたか。」
 カウンターで、不機嫌そうに入り口を眺めているひげ面の男はそれだけ言うと、
 奥から朝食を持ってきた。
 「ありがとうございます。イーサンさん。」
 お礼を言って、この店の店主であり、この付近の顔役でもあるイーサンから朝食を受け取り、
 近くへ座る。イーサンはそれを気にすることもなく、入り口の方に視線を戻した。
 「・・・2つ通り先の店でいざこざがあった。2人ほど怪我したらしい。」
 「かしこまりました、この後伺ってみます。」
 
 「最近多いですね。」
 「あぁ・・・夜の仕事が増えてきた中で迷惑をかける。」
 「いえ、私のような人間を置いて下さる宿は少ないので、助かっております。」
 「・・・男絡みのトラブルで恨みを買い、突発的な発作で物は壊すは、自傷行為で血まみれ
 あげく酒飲めば死ぬかってくらい飲んで潰れる。俺が会ってきた中でも悪い方の部類だ。
 これで客に怪我させてたら、俺でも追い出す事を考えただろうな。」
 「ご迷惑をかけているのは承知しておりますが、どれも無いと死んでしまうので。」
 そういってリュニは悲しげに笑った。

 発作的に人肌を求める。酒を浴びるほど飲んで倒れる。頭を掻きむしりながら暴れる。
 頭の声から逃れる為に幾分効果がある手法は、どれもこれも世間的にはロクな
 行為ではなかった。短時間接する客などには、まだ隠し通せるが、日常的に接する
 宿の人間などは一部恐ろしがっているだろう。これが一定数を超えるまでにリュニは
 次に行く町を決める必要があった。
 
 しばらく黙っていると、イーサンはジロリとリュニを見た。
 「・・・本当にダメな奴はな、そういうセリフを吐くときお前みたいな辛気臭い顔でなく、
 悪びれもない笑顔で吐くんだよ。・・・ある程度は便宜を図ってやる。」
 「ありがとうございます。」
 「いい・・・ここ最近のイザコザに対応するには傷を治せる神官の手が足りねぇのも事実だ。
 それが多少襲われても対処できる程度に腕が立つなら尚更な。」
 イーサンがおもむろに、カウンターからキッチンへと入っていった。話は終わりという事だろう。
 
 「同じところに居れない原因も、今必要とされる力も、全部あの方のものなんて・・・
 皮肉な事ですね。」
 ボソリとつぶやいた声は誰に聞こえるでもなかった。
 




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