ムーンエンド・キャンペーン第ニ部 第5章 【過去】

 

ルイ 「私は今のうちに地元の有力者とか、廷臣の方々にお礼を言いに行っておきますよ。 今回はちょっと我々に対する待遇が良すぎましたから、不満がでているかもしれませんし。」
ジョン 「俺も行こう。 ちょっとは心証を良くしておきたいしな。 領主も少しやりやすくなるだろうし。」
DM 「いいね。 確かにちょっと難しい顔をしている廷臣も少しながらいるし、挨拶をしても表情を変えない人もいるけど、挨拶して少しは口を開いてくれる人もいたよ。 『軍艦を壊すんじゃないぞ。』とか。」
ジョン 「はい、気をつけます。」
ルイ 「ここには、軍艦もあるんですか?」
貴族 「それは、国境の重要地帯だからな。 軍艦の3隻や4隻はある。 最近の我が国の内乱に乗じてハーディアルがおかしな動きを見せないとは限らないからな。 備えは必要だ。」
ルイ 「まったく、同感です。はい。」
貴族 「あとは、優秀な艦長がいれば言うことはないのだが…。」
ルイ 「募集中と言うわけですか。」
貴族 「まぁ、そんなところだ。 一人だけ優秀な艦長がいるが、そいつは今回は行かせないからな。 会う機会も無かろう。」
ルイ 「それは、残念です。」
 
やがて、宴も終り、夜が明けて。
 
エフェ 「それじゃ、ハーディアルに向けてしゅっぱーつ♪」
DM 「タレスティウスもちゃっかりついてきているよ。」
イーグル 「あ、頭が痛い。」
ルイ 「二日酔いですか。 ふふっ、お若い(笑)。」
イーグル 「ほっといてくれ(笑)。」
DM 「君達が指定された港の船着き場へ行くと、スモールガレーが帆を広げて出航準備をしている。」
ルイ 「おおっ、帆付きのガレーですか。」
DM 「そうそう、帆船とかはまだ最新式の船で普及していないんだけど、ガレー船(大勢の漕ぎ手が乗り込んで、沢山の櫂で前進する船)にも補助的に付いているんだ。」
エフェ 「そいじゃ、船長さんに挨拶して乗り込みましょう。」
船長 「おおっ、あんたらが夢狩人か。 しかし、思っていたよりも若いな。」
ルイ 「若さと情熱が取り柄でして。」
船長 「いいね。 そんじゃあ乗んな。 シェルトまでは3日の旅だ。」
フェイグランス 「おおっ、三日! 今回はでかい麦藁帽子と釣竿、魚入れを用意してきたからね。 釣りまくるよ!」
船長 「(フェイグランスの格好を見て)なんだね、この人は。」
ルイ 「釣りマニアなんですよ。」
フェイグランス 「まぁ、否定もしないよ。 早速後部甲板を借りますよ。 いそいそ。」
ルイ 「…や、やっぱり私も(笑)。」
船長 「ま、元気なのはいい事だ。 この中で船が苦手な奴はいないな?」
イーグル 「ぎく。」
船長 「なんだ、船は苦手か? まぁ心配するな。 この湖は波も穏やかだし、そうそう揺れることも無いさ。」
イーグル 「…ああ。」
エフェ 「この前にダンジョンに行く時乗った船は平気だったじゃない。」
イーグル 「あの時は、自分で船を操らなきゃいけなかったから、それどころじゃなかったんだよなー。 第一、地面に足がつかない所はあまり好きじゃないんだ。 ついでに今は二日酔い(笑)。」
ルイ 「そうですねー。 鉄の鎧を着ているあなたは沈みますし、ハンマーは水中では効果ないでしょうしね。」
イーグル 「俺は陸戦型なんだ(笑)。」
エフェ 「器用貧乏になるよりいいわよ。 ねー、フェイグランス。」
フェイグランス 「そこで、俺に振るな(笑)。」
船長 「うーむ。」
ルイ 「どうしましたか?船長。」
船長 「夢狩人は仲がいいのか悪いのか。」
ジョン 「悪いです。」
イーグル 「悪いな。」
フェイグランス 「異議無し。」
エフェ 「何を、いまさら(笑)。」
ルイ 「ね、変わったメンバーでしょ?」
ジョン 「お前が言うなっ!」
船長 「漕ぎ手を手伝ってもらおうかと思ったが、お前達に頼むと船が斜めに進みそうだ(笑)。 仕方ないから、部屋でゆっくりしててくれ。」
ルイ 「おおっ、ラッキー♪ これで釣りに専念できますよ。」
フェイグランス 「うまくいったねぇ。」
ジョン 「お前ら、これを狙ってたのかよ(笑)。」
DM 「さて、船旅は順調だよ。 銀の湖の波は相変わらず穏やかだ。 もっとも小雨がずっとぱらついているけどね。」
フェイグランス 「小雨くらいなら問題ないない。 一匹つれたぞーぉ! 大きさは…20分の11か。 中型だな。」
ルイ 「私は19ですよ。 超大物♪」
DM 「ここって淡水なんだよなー。 ま、それなりの魚が釣れたことにしておいてくれ(笑)。」
ルイ 「ああっ、手抜きです(笑)。」
DM 「さて、日も暮れて、そろそろ夕食の時間だ。 君達はあてがわれた船室に集まって、食事をするわけだけど。 今日は珍しくタレスティウスが真面目な表情で語り始める。」
イーグル 「なんだなんだ?」
タレスティウス 「今日は月の守護者『ムーンガード』について話をしよう。 もっとも、彼等については、わしも詳しいことは知らんのだが。」
フェイグランス 「彼…ら? 複数か。」
タレスティウス 「そう、その通り。 個人の名前ではない。 ムーンエンドのあらゆる時代に出現する謎の存在を称して『ムーンガード』と言う。」
フェイグランス 「国王のエルムさんとか?」
タレスティウス 「それについては、色々な考えがあるが、今は言う時ではない。」
イーグル 「なんなんだ。 要するに称号みたいなものか?」
タレスティウス 「近いが違う。 ムーンガードとはまさしく存在そのものを表す言葉だからだ。 ムーンガードは滅多に人の形を取って現ることはない。 そして、それらは大抵ムーンエンドを守る為に現れていたようだ。 たとえば790年に大陸よりやってきた進入者を蹴散らした巨大なサーペント(海蛇)も、ムーンガードだと思われる。」
ルイ 「ふむ。 ちょっとかるくメモでも取っておきますかね。 今後に関わってきそうです。」
エフェ 「そうね。」
タレスティウス 「(一呼吸おいて)だが、それだけではない。 儂はムーンガードには2つの種類があると考えておる。 それは月の女神に関係していることじゃが、その話は今度にする事にしよう。 だが、これだけは覚えておくがよかろう。 (ゆっくり息をすって)ムーンガードが人の姿で現れる時、それはムーンエンドの全てが巻き込まれる事件が起こったことを意味する。 あの5英雄がムーンエンドに辿り着いた時、そこにいたのはデーモンロード…かつて栄えた『銀の民』の文明を滅ぼした破壊者だったのだ。」
イーグル 「ふーん。 つまり、その5英雄もムーンガードだったっていうのか?」
タレスティウス 「その通り。」
イーグル 「で、5英雄って誰だ?(一同笑)」
DM 「しまった、イーグルは知らないんだね(笑)。 タレスティウスが、『誰かこやつに歴史を教えてやれ(笑)』と言う。」
エフェ 「いいわ、私が教えてあげる(笑)。 昔この島には銀の民と呼ばれる、高度な文明を持った種族が栄えていたんだけれど、ある日強力な存在に根絶やしにされてしまったの。 その後は暗黒の時代が続くんだけど、ある日外の世界からやってきた人間のうち、5人が中心となって、これを倒すことに成功したのよ。」
タレスティウス 「その強力な存在のことを我々はデーモンロードと呼んでおる。」
イーグル 「ほうほう。 デーモンロードね。」
エフェ 「我々が悪魔の王とか仮に呼んでいるだけで、本当は別の名前があるのかもしれないけどね。」
イーグル 「で、その5人はその後どうしたんだ?」
エフェ 「そのままこのムーンエンドに残って、それぞれが1つずつ国を建てたの。」
イーグル 「なるほど。でもこの島には国は4つしかないんじゃないっけ?」
ルイ 「一つは確か戦乱で滅びたんですよ。 はい。」
DM 「そうそう。 長い歴史を経る間にはお互いに衝突したりした時期もあったようだからね。 特にこれから向かうハーディアルは、軍事国家として有名なんだ。 今まで君達がいたのはランカスター王国。 他には豊かな土地を持ち、農業が盛んなジャコバン王国や、太陽神ラーラの教えを国教とする神聖国ウィングなどがある。」
イーグル 「なるほど。」
フェイグランス 「しかし、ウミヘビまでムーンガードとはねー。」
タレスティウス 「竜巻や嵐という話もある。」
ルイ 「つまり、あれですね。 この島には、他には無い『何か』があると。」
タレスティウス 「そのようじゃな。 (いつもの表情に戻って。)さて、儂は眠くなった。 休ませてもらうかの。」
エフェ 「私もー。」
イーグル 「俺も。 酔わない為には寝てるのが一番だ。」
ルイ 「殆ど揺れないのに、不思議です。 私は星でも眺めますよ。 この時代は電気などないでしょうから、さぞ綺麗でしょうね。」
フェイグランス 「そうだね。」
ルイ 「あの星々に比べれば、我々などちっぽけな存在です。 しかし、我々には星にはできないことができます。 体は小さくとも、夢はでっかく! とうちゃん、俺はやるぜ!(笑)」
イーグル 「途中から訳わからなくなってるぞ(笑)。」
フェイグランス 「俺も早めに寝よう。 早朝の方が、魚は釣れるだろうし。」
エフェ 「休める時に休んでおくのが、一流の冒険者と言うものよ。」
ジョン 「早く一流になりたいな(笑)。」
エフェ 「…うん(笑)。」
 
翌日は何事も無く、その夜。
 
DM 「今日の夕食の時にも、タレスティウスが話をするよ。」
ルイ 「拝聴しましょう。 真面目な顔の時のタレスティウスは貴重な情報ソースです。」
ジョン 「いつもこうだといいんだけどな。」
エフェ 「きっと、ボケちゃってるから、無理なのよ(笑)。」
タレスティウス 「こりゃ(笑)。 儂はボケてなどおらんぞよ。 さて、ええと、…なにを話すんじゃったかの?」
エフェ 「ほら(笑)。」
ルイ 「ボケ爺さんにもどっちゃったら、情報が無くなるじゃないですか(笑)。」
エフェ 「だって、このお爺さんを100%信用していいわけ? そもそもどうして私たちについてくるの?」
タレスティウス 「(真面目な表情に戻って)それはいずれ話してやるさ。 そう、今日は月の女神『イシュリア』について話をしようかの。」
エフェ 「月の女神ね。 名前からしてこのムーンエンド島とも関係が深そうね。」
タレスティウス 「うむ。 そのイシュリアは中立神だったのだがな、他の中立神とはちょっと違っておった。」
イーグル 「どんな風に?」
タレスティウス 「普通、中立神といえば、善にも悪にも属さないものと考えるであろう?」
イーグル 「ああ。」
タレスティウス 「だが、イシュリアは善にも悪にもどちらにも属しておったのだ。 まぁ、それだけならば良かったのだが、やがて光の神々と闇の神々は、太陽神ラーラと、暗黒神ドールをそれぞれ筆頭として、2つの陣営に別れて争いをはじめたのだ。 この戦いはイシュリアを非常に苦しめた。」
イーグル 「だろうな。 どちらにつくか決めなきゃいけないからな。」
タレスティウス 「左様。 だがそこは神々の話。 イシュリアはやがて善のイシュリアと悪のイシュリアの2つの異なる存在に引き裂かれ、互いが互いを敵として戦う事になってしまったのじゃ。」
ルイ 「ほう。」
タレスティウス 「この戦いを終らせることができるのは、彼女の姉であり、争いの神であるアリアドネのみであったと言われる。 じゃが彼女は憎しみの神であるラドゥサによって闇の陣営に引き込まれてしまい、2人のイシュリアは戦いを止めることはできなくなってしまった。 力が拮抗していた2人のイシュリアは共に激しく戦い、傷つき、霧の中に浮かぶ島の上で互いを滅ぼした。 それ以来この島はムーンエンド…月の終りの島と呼ばれるようになったのじゃ。」
ルイ 「ほう、そんな言い伝えがあったんですか。」
フェイグランス 「ムーン。」
エフェ 「それを言うなら、フーン、でしょ?(笑)。」
ジョン 「つ、つまらん。」
タレスティウス 「そういう事じゃ。 とにかく、ここではイシュリアの力が強く働くし、女神の力を授けられたムーンガードという存在が、歴史の時々に現れるわけじゃ。」
ルイ 「現れるのはいいですが、なんで現れるんでしょうねぇ。」
エフェ 「ムーンガードとか言うくらいだから、何かを守っているんじゃないの?」
タレスティウス 「(にやりと笑って)お主、なかなかいい事をいうの。 そういった考えも確かにあるのじゃ。 もっとも、くわしいことはなにも分かっておらぬがな。」
ルイ 「興味深い話です。」
 
その後も航海は順調に進み、3日目の昼にはシェルトの港に到着する。
 
船長 「ほら、ついたぞ。 盗賊達に財布をスられんようにな。」
エフェ 「うん、気をつけるわ。 領主様によろしく。」
ジョン 「ありがとうございました〜。」
イーグル 「うっぷ。」
船長 「こらこら、甲板に吐くなよ。」
ルイ 「釣った魚はどうします?」
フェイグランス 「もう、食べちゃったよ。」
ルイ 「さすがですね(笑)。」
フェイグランス 「そいじゃ、船長もお気をつけて〜。」
船長 「おう、アンタらもガンバレよ。 じゃあな!(碇を上げて出港する)」
ルイ 「早々に帰っちゃいましたね。 まぁ、治安の悪い町では船員も休まりませんか。」
DM 「そう。 君達が降り立ったシェルトの港はあちこちにゴミが落ちており、また空の木箱や、中身の古くなった袋が放置してあって雑然とした感じだし、はっきり言って汚い。 でも港の両脇に立ち並んでいる倉庫群は、汚い外壁ではあるがしっかりした作りになっている。」
エフェ 「簡単に中身を荒らされたらたまらないものね〜。」
ルイ 「やはり、盗賊ギルドで管理しているんでしょうね、倉庫も。」
DM 「そのようだね。 この町でもっとも力があるのは盗賊ギルドと、その長である『ディーダー』と呼ばれている人物だから、倉庫を荒らすことはギルドに反抗することになる。」
エフェ 「で、高い使用料をとると(笑)。」
イーグル 「なるほどな(笑)。 …うっぷ。」
エフェ 「こら、吐くなら湖になさい!」
フェイグランス 「魚の餌になるかも(笑)。」
ルイ 「その魚をフェイグランスが食べると(笑)。」
フェイグランス 「うげぇー。」
エフェ 「ほらほら、遊んでないでいくわよ。 こんな所にいつまでもいると、よそ者みたいで目をつけられちゃう。」
マリュータ 「とっくに目はつけられてるぞ。 周りにいる奴全部が敵だと思っておけよ。」
エフェ 「そりゃそうか。 さっさと町を抜けるわよ。」
ジョン 「おう。 また足止めされるのはゴメンだ。」
DM 「そのエフェはとりあえず知力チェック。」
エフェ 「あ、あら、失敗。」
マリュータ 「エフェ、お前金をすられたぞ!(そう言って道を歩いている男の1人を追いかける。)」
エフェ 「うわーん、早速?! 私も追いかける!」
DM 「エフェとマリュータの速度だと…うん、追いつくな。 『何のこってす?』とかとぼけているけど?」
エフェ 「私のお金を返しなさい!」
「さぁ、何の話だか…(と、言ったところでエフェに短剣を突きつけられて黙る。)」
エフェ 「全く…。 私たちはこの程度日常茶飯事なんだから、このままあなたの喉を突くくらいわけないことよ?」
「はっはっは…(乾いた笑いの後)…わかったよ、悪かった。 金は返すよ。」
エフェ 「よろしい。(金を受け取る。)とっと行きなさい。 今度会ったら承知しないわよ?」
「こわいこわい♪ じゃあまたなー!」
エフェ 「また、ってなによ、またって。 …まさか?!」
DM 「うん、100PP(=500GP)程減ってるね。」
エフェ 「うわーん、やられた!(泣)」
ジョン 「あらら、エフェが泣いてるよ。」
フェイグランス 「全く、厄介な町だねぇ。」
DM 「他にも油断ならない目付きの男達が沢山いるからね。 気をつけるように。 それからこの町の道は殆どが舗装されておらず、舗装されている部分も、石畳がはがれて土がむき出しになっていたり、石畳の間から草が生えているなど、痛みが目立つ。」
ルイ 「おやおや、まるでスラムのようです。」
DM 「そう、道沿いに立ち並ぶ家々も、まるでスラム街の家みたいなものばかりだし、町の中心部にも高い建物は殆ど見当たらない。
せいぜい、盗賊ギルドが管理していると思われる建物だけだね。立派なのは。」
エフェ 「まったく、素敵な町に来たものだわ。」
イーグル 「ほーんと、噂に違わぬステキさだな(笑)。」


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