『シュテールシュベルト』との出会い
(文:ぷらなりあ)


とうとう先だってのセッションで「スターメタルの剣」を手に入れたので、嬉しさの余り入手イベント(?)をSSにしてみました。

状況としては『蛇人間の城塞その1』のセッションの途中、ペデスタルからトーチポートに帰って報酬をせしめた後、という事になります。
この間書いた『緑風茨騒動』のお話の直前、という事になりますね。
というか最後繋がっています(苦笑)

というわけで、趣味丸出しのバカ話でお目汚しレベルは相変わらずですが、お暇な方は読んでみてくださいね。


大きな灯台が目印の港を持つトーチ・ポートの町では、交易船に乗って訪れた商人や、商人に品物を卸したい職人たちが港の一角で仮設の店を立てる事がよくあり、その時には普段町で手に入らないような貴重な品や珍しい物が手に入る事がある。
 何かときな臭い土地という事もあり、特に武器・防具職人たちや魔法の道具を扱う商人がよくやってくる、冒険者たちにとってはとてもありがたい場所なのだ。
 その日……ペデスタルから戻った面々が訪れた時も、ちょうどそんな小さな市が開かれていた。

「いやー、ちゃんと報酬がもらえてよかったですねー」
「ちゃんと仕事をしたんだから、当然の権利デスヨ」
 ゼルギウスの晴れやかな言葉に、ちっちっと指を振りながら答えたのはユーヌである。
 とはいいつつ、さしものユーヌも死霊術師の塔で手に入れた宝物と万神殿から得た報酬に暖かい懐を抱えてほくほく顔である。
「アレクセイちゃんがんばったもんね~♪」
 ペデスタルで起きたフィリスとの一件以降、少々しおらしかったウィンシーもニコニコ顔で、報告書片手に神殿との交渉を成功させたアレクセイを手放しに褒めた。
「装備を整えてユアンティどもの陰謀を打ち砕くためですからね!」
 褒められたアレクセイもとても嬉しそうである。
「うむ。更に鎧を固めんとのう」
 アレクセイの言葉に髭をしごきながら頷くグラムに対して、
「まだ足りないのか……」
 少々驚いたように目を開くバーンだったが、
「いや、キミはもう少し防御に気を使うべきだと思うヨ?」
「違いない」
 ユーヌとグラムに突っ込まれ、頭を描きながらそっぽを向くのだった。

 一行が港にやってくると、ちょうど数隻の交易船が投錨しているらしく、海の向こうからやってきた商人たちや、貿易商人目当ての武器職人たちが来ているようで、結構な賑わいを見せていた。
「おお、ちょうどよかったようじゃのう」
 スクロールや魔法のアイテムを手に入れる事が目的の魔法使いコンビやユーヌと別れ、武器防具狙いのアレクセイ、グラム、バーンの3人は職人たちが店を出しているエリアに来ていた。
「何がちょうどいいの?」
 ちょうども何も予想通りでは?と思ったアレクセイが訊ねると、
「どうやらドワーフの匠が来ておるようじゃと思ってのう。買うにしろ強化をしてもらうにしろ、そこいらの人間の鍛冶屋に頼むよりよほど信がおけるし、第一腕がよい」
 と、グラムは誇らしげに頷いて見せた。
「まぁ、確かにそうだな」
 バーンはそう言うと、おもむろに「ディテクトマジック」を発動させた。
「……あそこの店からは魔法のオーラが出てるようだな。魔法の武器防具も扱うような店なんじゃないか?」
「ふむ。強化もやっておるようじゃし、あそこにするかの」
 看板の文字を確かめたグラムは、早速その店へと入って行った。



店の中には様々な武器防具が大量に、かつ雑多に並べられており、今も数人のドワーフが忙しそうに木箱を開けていた。
 貸し店舗と大型の天幕を組み合わせたなかなかに広い店だと言うのに、中はごちゃごちゃしているわ鉄と錆止め油の匂いが充満しているわでかなりカオスな状態にある。
「うわぁ……目が回りそう……」
「上質の油を使っておるようじゃな。これは当たりの店だわい」
 神官のアレクセイとドワーフ戦士のグラムでは随分感想も異なるようだった。
「いらっしゃい、冒険者の衆。どれも自慢の品ばかりっすよ、よく見てってよー」
 早速、一人の若いドワーフが近寄ってくる。
「買い替えっすかい? 今回は強化の職人も来てるから、1週間以内で終わるものなら強化も請け負うっすよ」
 ドワーフにしてはちょっと軽いが、明るく近寄ってくる店員に対し、店の様子が気に入ったのか、特に逡巡する様子もなく早速グラムは用向きを伝えた。
「まずはワシの鎧と盾、それからこっちの若いのの鎧の強化を頼む。あとはそっちの細っこいのが着られる様なプレートメールを見繕いたい」
 そう言いながらグラムはちらっとバーンとアレクセイの方を見る。
 バーンも特に何も言わずに頷くと、担いでいた自分の鎧の入った袋を取り出した。
 アレクセイはといえば「細っこいのとはひどいなー」と言いつつ、もう早速プレートメールの積んである一角にキラキラした目を向けている。
「毎度ありっ! ……ほうほう、さすがにいい物を身に付けてるっすね。……親方―! これに強化かけて欲しいそうっすがー?」
 若いドワーフが奥に声をかけると、いかにも気難しそうな、年老いた逞しいドワーフが姿を見せた。髭にも髪にも大量の白い物が混じり、長年火の前で作業を続けている事を物語る赤黒い身体は分厚い、巌のような筋肉に覆われている。
 そして若い店員から受け取ったグラムとバーンの鎧と盾をしばらく眺めると、親方と呼ばれたドワーフは黙って頷いて奥の方に運んで行ってしまった。
「すんませんねえ。質の悪いのには触りたがらないんすよ」
 苦笑する若衆に、グラムは
「いや。職人とはそうあるべきじゃよ」
 ニヤリと笑って何度も頷いた。


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