エンディング:クーセリア

(文・ぺけ)




「星が綺麗っすねぇ」
 宴会も盛り上がりきったころ、1人離れた所で空を見上げつつ呟く
 人が多いところが嫌いなわけではない、でも騒がしいのが続くと静かなところに行きたくなる。
 結局は人嫌いなのだろうか、そうでないのか良く分からないものだ。

 一緒に苦楽を共にした皆は、様々な組織に属するらしい。
 一応自分にもいくつか誘いが来ていたが、すべて断った。
 
 誘いに来た人々は口々に言う、曰く英雄、ベテラン、学園の奇才など
 だが、他のメンバーを見ていて思う。それらの称号は人を導き、人の見本になるべき存在に
 送られる言葉だと思う。
 どれだけ魔法の才があろうと、どれだけ剣術に長けようと、それが身勝手なものであれば
 ただの腕の立つ荒くれ者や変人でしかない。
 少なくともクーセリアはそう思っている。
 自分のことは自分が良く分かっている。
 仮に組織に居ても長くは持たない。SEIKYOに居られたのはシーライ師匠が裏で色々便宜と特例を図ってくれたからであり、本来組織から追放されてもおかしくはない程度に自分勝手には生きてきた。

 「・・・随分センチメンタリズムだな、星など、何処で見ても一緒だろうに」
 と、腰につけた刀が思念で語りかけてくる。まだ会って短い間だが彼も私と同じで
 あまり人付き合いが良くないようだ。アリスや他のメンバーから聞いた話では
 結構派手に暴れていたらしい。あのアリスに斬りかかられる寸前まで行ったという、その性格は少なからずクーセリアにも驚きのものであった。
 
 身勝手に自分の欲望を追求する。そういう意味で彼と自分は似ていると思ったし、そういう意味でほかのメンバーほど彼を憎めない自分もいた。
 「すまなかったっすね。だまし討ちみたいな真似をして」
 仲間の機転で自分の魂は助かったが、それに関して申し訳ない気持ちはずっと残っていた。
 「いくら謝ろうと、結果は変わらぬ。 我は人の悪意を見ることを怠り、敗北した。それだけだ」
 しばらく気まずい沈黙が流れた後、ふと思い出したかのように
 「さいとうさんは何で剣になったんすか、何かやりたいことは無いんすか」
 とたずねた。
 彼はしばらく黙った後、簡潔に2〜3の目的を教えた。
 「なら、決まりっすね。次に行く場所は」
 「機嫌取りなどよい、我の意思にかかわらず力はある程度出せよう、貴様に不都合はないはずだ。」
 「あるっすよ。私が申し訳なくて力を使う気になれないんす」
 彼はクックックと堪えた様な笑いをした後。
 「変な女だ。いっておくか死んでも我は一向に構わぬ。次の宿主を見つければよいだけだ」
 と言ってきた。そんなに遠まわしに心配されても心は既に決まっている。
 彼はまたしばらく黙った後。
 「ならば誓え、我との契約は既に終了しておるからな、適当なところで食い殺そうかと思ったが都合の良い駒を亡くす必要性もないからな」
 今度はこちらがくすくすと笑う、素直じゃないな、本当に。
 
 見上げれば星空、流星が一つ流れていた。
 
 彼と彼女は静かに言う。
 「ここに契約はなる、我はさいとう。自らの力への欲望、そして果たせなかった約束を時を越えて果たす者なり。」
 「ここに契約はなる、私はクーセリア・二フィリーゼ、自らの知識への欲望、そして果たせなかった友との約束を果たす者なり」
 「「ここに契約はなった。我ら互いに死すまで、力と知恵を合わせ、ともに歩みともに戦うことを誓う。」」
 
 「せいぜい我の期待にこたえてみよ、我が主」
 「はいはい、精進するっすよ。」
 この日、最初の出会いから初めて互いが笑った。
 そして、この日より真のメイガスとしての道が始まっていったのだった。

 こうして、クーセリアはアブロサムに戻り、シーライ師匠にいつも通り簡潔な行き先だけ告げて旅立った。自分勝手、身勝手な2人の道中は、多くの人を悩ませため息をつかせつつも、どこか憎めない。そんな印象を持たせていたという。




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