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牢に捉えられていた男性は、引き締まった肉体に、強い光をたたえた瞳の持ち主だった。
「バグベアに負けそうな人には見えませんけど…」
アレクセイの問いに、隣にいたバーンが答える。 「人質をとられたんだそうだ。」
なるほど、助け出された彼は、すぐに一人の女性を気遣っている。 やんごとない風体の女性は、おそらくどこかの貴族か王族なのであろう。
やがて彼は女性を侍従と思しき人々に預け、一行に礼を述べる。
「助けていただき、感謝します。」
その騎士が礼を行う所作は、完成されているといっても良い程であり、美しい。 鎧には、ハイローニアスの紋章が刻印されていた。
「これは、ハイローニアスの騎士どのであられますか。」
アレクセイも礼を返すが、相手につられてしまい、思わず神殿でいつも行う女性神官の礼をとってしまった事に気づいてハッとする。
「これはこれは、ハイローニアスの神官様。」 その騎士・ヴェルナーは、同門の神官がいた事で、一行を信用してくれたようだ。
女性神官としての礼を不審に思っている様子はない。 アレクセイは往生際悪く本名と性別は名乗らなかったものの、あえて14歳・男と言う事はやめにした。
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